元記事著者:Rino 翻訳:葛西祝
ブルックリン、ダンボ地区の中心部にゲーム開発者が活動したり、繋がりを作ったり、コラボレーションしたりするユニークな非営利の場所がある。マンハッタン橋の高架下のゲーム(Games Under The Manhattan Bridge Overpass)またはGumboとは、そんなインディーゲームを推進する団体の名前だ。これはそんな彼らの場所をもじった名前だけど、団体のつつましやかな始まりであるとともにインディペンデントのルーツの証明でもある。
Gumboの初期
Gumboの始まりを正しく指摘するには入り組んでいる。異なるコミュニティと構想が最終的に一緒になることで、今日の団体になったからだ。当初は別のコワーキングスペースで活動している開発者グループが、お互いを気遣いながら気軽に集まるものだった。それと並行して、Gumboコレクティブのボードメンバーであるチャン・イーイー氏もニューヨークで大きなインディーゲーム開発者のミートアップグループを運営していた。またインディーでアーケード筐体を作る非営利団体Death by Audio Arcadeも関わったと言われている。
結局のところ、世界的なパンデミックや、いまのコワーキングスペースのレンタル料の高騰に加え、開発者たちの「本当の自分たちだけの場所が欲しい」という願いによって、Gumboのスペースが形になっていったのだ。
「僕らはもともと使っていたコワーキングスペースの2ブロック先で、その場所を見つけたんだ。広大でオープンなエリアで、たくさんのむき出しのレンガがあって、床から天井まで窓があった。最高だったよ」Gumboコレクティブのボードメンバーであるヴィニット・シャー氏はそう語った。
「スペースを作ってくれたのは我らがヘイル・メアリーさ。スペース作りを始めるのに、少なくとも10人のメンバーが1年のリース契約を結ぶ必要があった。僕たちはなんとかやっていったけど、スペースには家具も洗面台もなかった——何もなかったんだ。みんなは道端で見つけたソファを持ってきていたな。僕ら自身の手で全部リノベしたよ。壁の打ちこわしから電気の配線までね。自分のお金でデスクを買った人もいた。僕らはその経費を記録しておいて、収益が出始めてたらその分を返済するようにしていたよ」
積極的なGumbo
ニューヨークは世界有数のグローバルな都市であるにも関わらず、この街自体はビデオゲーム開発をあまり促進していないように映る。だからこそGumboは、ゲーム開発者が同じ考えを持つクリエイターやネットワークに出会うためのホームとして傑出している。パンデミックが落ち着き始め、GumboのDiscordメンバーが増えていくと、より多くの人が加わり始めた。スペースはコワーキングスペース、キッチン、そしてたまり場エリアを備えた場所として輪郭がはっきりしていった。Gumboはビデオゲームイベントを開催するのに最適な場所になっていった。そして立ち上げメンバーはGumboが非営利団体だと登録申請手続きをした。
いまではGumboへの加入を希望する人のための短い順番待ちリストが用意されている。メンバーシップの料金は1日あたり20ドルから、1年間で月額250ドルのプランまである。メンバーになるとGumboと専用のデスクエリアにフルでアクセスできるようになる。
日本へ拠点を作るプラン
さてこちらGumboは日本でも無縁の存在ではない。Gumboのチームはニューヨークのイベントにて、JETRO(※日本と世界の相互貿易と投資の促進に努める政府関連機関)の担当者と偶然に出会ったことをきっかけに、東京とニューヨークのあいだで試験的な交流プログラムを提案することができたのだ。いま8人のメンバーが東京におり、日本で交流プログラムの構築ができるかどうか確認する “予備遠征”中である。
ヴィニット氏はチームの多くが日本のゲームに刺激を受けており、そしてアジアのゲーマー市場の参入について知りたがっているため、深く学べる機会について挙げている。特にヴィニット氏は、今後のプロジェクトのためにビジュアルノベルの分野で開発者や関係者たちと繋がろうとするつもりだ。
「僕らは最終的には戻って、学んだことをまとめてメンバーに伝える予定だ」そう彼は言う。
「長期的には、僕らは(日本とアメリカの参加者を交換する)本格的な交流プログラムを作りたい。いま、北米ではロサンゼルス、ボストン、モントリオールと、国際的にはフランスとベルギーのブリュッセルでプログラムを行っているんだ」
7月7日、初の日本を拠点としたGumboのイベントがJETROオフィスで開催された。「ハッピーアワー・プレイテスト」という東京を拠点とするインディーゲームファンや開発者がGumboのゲームを試遊する機会となった。今回展示されたのは『Creatures of War』(プラットフォーミングアドベンチャーRPG)、『Coin Simulator』(リアル3Dコイントスアプリ)、『Big Boss』(非対称対戦ローグライト)、そして『Unwound』(シュールリアルなキャンディランドアドベンチャー)である。日本の開発者R太は『Reso-Seeker』 (メトロイドヴァニアの横スクロールパズルプラットフォーマー)で参加している。
Gumboの未来
今日までのGumboコレクティブを作り上げるまでの道のりは、決して課題が無いものじゃなかった。今みたいに確立し、よく整備されたマシンのようになったとは言っても、まだまだチームが改善したいと望んでいることはたくさんある。
「コミュニティは大きくなると、どういう風に成長させるかのコントロールが難しくなる。僕らへの期待は大きくなっていて、実際のGumboが何なのかついては誤って伝えられている」ヴィニット氏はそう言う。
彼は「Gumboがゲーム開発のクラスを提供している」とか「Gumboがゲームへの資金提供を支援している」という誤解のように、伝言ゲームで抜け落ちている事柄について挙げている。
「僕らは高校や大学と協力して講演を行っている。人々はGumboのネットワークを通じて資金を得ている。だけど、それらは僕らが提供するものには含まれてない。結局のところ僕らは単なるスペースに過ぎないんだ」
ここ日本では、Asobuなどの取り組みが、コミュニティやコワーキングスペース、交流スペースを作ろうとするGumboの一部分を反映している。日本はインディーゲームへのさらなる支援を強く必要としているが、Gumboと同じような課題が待ち受けているのかもしれない。
Gumboについてさらに詳しく知りたい場合は、Twitterアカウントを通して連絡を取ることができる。
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